借入をするにあたって、”固定金利”OR”変動金利”という金利の種類を気にする人は多いですが、そもそもその金利が何に基づいて決定されているかについて意識している人は多くありません。
そこで、今回の記事では融資金利のベースレートになる「短プラ(短期プライムレート)」「長プラ(長期プライムレート)」「TIBOR(タイボー)」の内容について簡単に解説するとともに、これらが中小企業融資の金利にどのように関わっているのか?について見ていきたいと思います。
この記事を読むことで、何に注目していれば金利動向を把握できるようになるのか?が分かるようになるかもしれません。
ベースレートの詳細をそれぞれ解説
短プラ(短期プライムレート)とは?
短プラは、優良企業(業績が良い、信用力・格付けが高い)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、期間1年以下の短期貸出をする際の基準となる金利のことです。
以前は”公定歩合”に連動していましたが、1989年からは各金融機関が自行の資金調達コストや譲渡性預金(CD)などの市場金利動向を基に総合的に決定したものを使うようになっています。
しかし、現実的には短プラは、日銀の政策金利(無担保コール翌日物金利)に連動するという実態があります。日本銀行がHPで公開している長・短期プライムレート(主要行)の推移を見ると、主要銀行の短プラは2009年以降1.475%で変わっておらず、マイナス金利政策導入前後も変動していません(*1)。
*1 マイナス金利は2016年に導入され2024年3月に開場されました。マイナス金利政策が解除されたのに短プラのレートが上がらないのは、マイナス金利が導入された時に主要行が短プラのレートを据え置いたからです。
長プラ(長期プライムレート)とは?
一方、長プラは民間金融機関が企業に対して資金を1年以上貸し付ける際の最優遇貸出金利でのことです。ベースは銀行が発行する5年物普通社債の発行利率やスワップレートなど、銀行の市場での調達金利を参考に一定の利ざやを乗せて決定します。
日本銀行の統計で採用されている長期プライムレートは、かつて長期資金の融資を担っていた長期信用銀行の流れをくむみずほ銀行が長期プライムレートとして自主的に決定・公表している数字を掲載しています。
なお、従来は長期貸出に関して「長期プライムレート」を基準に貸出を行っていましたが、現在は長プラを基準に貸出を行うことは殆ど無いようです。長期貸出においても、「新短プラ」に一定利率を上乗せした利率(これを「新長期プライムレート」と言う)やTIBORを使うことが主流になっています。
TIBORとは?
TIBORとは「Tokyo Interbank Offered Rate(東京インターバンクオファードレー)」の略で、全銀協TIBOR運営機関が公表している数値です。直訳すると「東京銀行間取引金利」となります。要は東京の主要銀行同士が短期間お金を貸し借りする際の金利の基準という事ですね。
レートは金融機関が短期資金をやり取りするコール市場で調達する金利を目安に決まります。1週間物、1か月物、3か月物、6か月物、12か月物という5つの種類があり、期間が長いほど金利は高くなります。金融機関は企業の信用力に応じ、TIBORに一定のスプレッド(利ざや・経費)を上乗せして我々中小企業に融資します。
また、銀行同士がお金を融通し合うときの金利がTIBORなわけですから、TIBORが上昇すれば我々がお金を借りるときの金利も高くなるという事になります。最近では、TIBORをベースとした市場金利連動型のスプレッド融資の件数は非常に大きくなってきています。
融資金利はどのレートに依存して決まるのか?変動金利・固定金利別まとめ
融資金利のもとになるレートを変動金利・固定金利別にまとめてみました。
項目 | 変動金利 | 固定金利 |
---|---|---|
基準金利の基になるレート | ・短プラ ・長プラ ・TIBOR | ・国債金利 ・長プラ |
補足 | 最近は長プラが使われることは殆ど無く、短プラもしくはTIBORが選択される事がほとんど。 | おおむね国債の該当期間に対応した利率を最初のベースとして考えと良い。 |
結果としては上表のような感じになるのですが、実際の融資現場では基準金利は形骸化していると言っても過言ではありません。
なぜなら、金融機関同士の競争があるからですね。たとえば、優良企業はどこの金融機関からでも借入可能なので、過当競争となり基準金利を無視した低利での貸出が行われます。
他にも融資需給関係、新規取引先獲得のための政策的理由、取引先との力関係など、その時々の状況に応じて異なる金利が使われますし、下記記事に記載のように「調達金利、調達経費、目標利益、貸倒れリスク」など利率に影響を及ぼす様々な要因があります。
まとめ~中小企業は格付けアップに尽力しよう!
では、中小企業としてはどうするのが正解なのか?
と言うと、一つの真理は「財務内容の磨き上げを行い格付けをアップさせること」に尽きると思います。格付けがアップすれば、金融機関からするとそれだけ魅力のある企業になりますので、価格交渉力(金利交渉力)がついてきます。
格付けをアップさせたければ、毎期しっかりと利益を出すしかありません。それによって自己資本を厚くし、既存の借入金を有に返済できる体力をつけなければなりません!下記記事で「格付(債務者区分)」の詳細を記載しておりますので、そちらもご参照ください。