信用金庫は地域の中小企業にとってはなくてはならない存在です。
なぜなら、地域の中小企業にとって信用金庫ほど親身に会社の事を考えてくれる存在はいないからです。中小企業経営者にとって、親身になって対応してくれる信金担当者の存在は何より心強いでしょう。
しかしそんな経営者でも頭を悩ませるのが「信用金庫の融資金利・利率の高さ」ですよね。信用金庫や信用組合は何かと高いなぁ!と感じているのは私だけでは無いはずです。
今回の記事では、信用金庫と銀行の融資金利を比較して信用金庫の金利が銀行と比べてどの程度高いのかを把握するとともに、なぜ融資金利が高くなってしまうのか解説していきます。
銀行と信用金庫の融資金利比較
今回の記事は2024年2月時点の新規融資の貸出金利を比較しています。ソースは日銀HPから。
金融機関 | 短期融資 | 長期融資 |
---|---|---|
都市銀行 | 0.245% | 1.139% |
地方銀行 | 0.449% | 0.870% |
第2地方銀行 | 0.643% | 1.047% |
信用金庫 | 1.779% | 1.563% |
パット見て分かりますね。
メガバンク(都市銀行)、地方銀行、第2地方銀行間での差こそあれど、いずれも”銀行”は信用金庫よりも金利が安いです。逆を言えば、信用金庫は銀行と比べるとどの種類の銀行と比較しても金利が高いという事になります。
中小企業向け融資の貸出金利の構成要素を把握
次に「中小企業向け融資の貸出金利の構成要素」を把握しておきましょう。
これを把握しておくことで、後で記載する信金の融資金利が高い主な理由が分かりやすくなります。
融資金利=調達金利+調達経費+個別企業貸倒れリスク+求める収益など
ex)=調達金利 0.1%+調達経費 1.0%+個別企業貸倒れリスク0.5%+求める収益0.5%=融資金利 2.1%
調達金利
調達金利は、一般的に預金者からの預金ですね。雀の涙にしかなりませんが、我々が預金すると利息が支払われます。この利息に設定されている金利部分がいわゆる調達金利です。
調達経費
次に調達経費ですが、これは”貸出に使うためのお金”を集めるための経費ですね。これは大規模銀行の方が規模の経済が働いてより低利で調達出来そう!と直感的に感じられますね。例えばテレビCMを全国に流すとしたら全国に支店を持つメガバンクの方がより安くで預金者を集められます。
また、メガバンクや地銀などでは預金者から調達するだけでなく市場からの調達が行えることも大きいです。いわゆる銀行間取引(インターバンク市場)によって市場から資金を調達することが出来るのですね。
市場での資金調達は経費がほとんどかからないため(イメージ的にはネット証券で株を買うイメージです)、メガバンクと地方銀行は調達金利が低くくなり融資金利は安く出来ます。
なお、信用金庫は一般的に銀行間取引に直接参加することはできません。銀行間取引は主に商業銀行(メガバンクや地方銀行など)を対象とした市場であり、信用金庫はその規模や性格上、直接参加することが難しいです。
一応、信金中央金庫や提携している商業銀行を通すことで、信金も銀行間取引に間接的に参加することは出来ます。しかし、直接的に参加する場合と比べればコストがかかることは明白ですよね。
個別企業貸倒れリスク
これは信用格付けによる企業の信用度を利率にしたものです。各信用金庫間でも少し違いはあるでしょうが、「正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先・実質破綻先」などの債務者区分に応じて、リスクに対応した金利を上乗せすることになります。
正常先の一つ下のランクである要注意先に位置付けされるだけで、金融機関は当該企業への融資額に対して、1%~5%の貸倒引当金を計上しなければならなくなります。つまり、費用を計上しなければならなくなるという事。
信用金庫がメインターゲットする中小企業はどうしても優良企業と比べればデフォルト率は高いため、貸倒れリスクを反映させると必然的に金利は高めになってしまいます。
求める収益とは
求める収益とは、いわゆる”利ざや・スプレッド”の事です。各金融機関は目標とする利益を達成するために必要な収益を計上すために一定の利率を上乗せします。
信用金庫の貸出金利が高い主な理由5選
それでは上記を踏まえて、信用金庫の貸出金利がメガバンクや地方銀行(地銀)と比べて高い主な理由を簡単に紹介していきます。
1. 規模の違い
メガバンクや地銀は規模が大きく、資金調達コストを抑えることができます。一方、信用金庫は規模が小さく、調達コストが高くなりがちです。そのため、貸出金利にもそのコストが反映されます。
これは先程の”調達経費”のところでも書きましたね。
2. リスクの違い
いわゆる貸出先のリスクプロファイルですね。
信用金庫は主に中小企業や個人を対象として融資を行いますが、これらの顧客層は大企業と比べて信用リスクが高いと見なされることが多いです。このリスクをカバーするために、貸出金利が高めに設定されることがあります。
信用リスクが高い=貸倒れリスクが高いということです。
3. 資金調達の方法
メガバンクや地銀は、資本市場からの直接調達や海外市場での調達など、多様な資金調達手段を持っています。これに対して、信用金庫は主に預金を原資とした資金調達が中心であり、調達コストが高くなる傾向があります。
4. 競争環境
メガバンクや地銀は規模のメリットを活かして、低金利での貸出を行うことができ、価格競争力があります。信用金庫は地域密着型の運営を行っているため、競争力で劣る部分があり、貸出金利が高く設定されることがあります。
5. 収益構造
信用金庫は収益基盤が限られているため、貸出金利を高めに設定することで収益を確保しようとする傾向があります。メガバンクや地銀は、手数料収入や投資収益など多様な収益源を持っているため、貸出金利を低く抑えることができます。
まとめ
ここまで見てきた要因が複合的に影響するため、信用金庫の貸出金利はメガバンクや地銀と比べて高くなる傾向があります。
「金利が高いのであれば信用金庫と付き合うメリット無いし、付き合わないほうが良いのでは?」
と感じる方もいるかもしれませんが、そうではありません。むしろ、昔も今もこの先も中小企業にとってのメガバンクは信用金庫であることが多いでしょう。
信用金庫・信用組合ほど地域に根づいた営業をしている金融機関はありません。メガバンや地銀と比べれば担当者が親身になってくれる事も少なくありません。孤独な経営者にとって、自社の財務内容や事業内容も理解しつつ伴奏してくれる人の存在は大きいものです。
確かに金利は高いですが、金利だけでは測れないメリットが信用金庫にはある!かもしれませんよ。