会社を設立する際、資本金や株主、本店所在地、商号など様々な事項を決める事になりますが、決めなければならない事の1つに「定款に記載する事業目的」が有ります。
とは言っても、これから会社を経営しようとしている方にとって、会社の事業内容(目的)を考えるのはそれほど難しくないでしょう。
しかし、FXで法人化しようとしている方が、定款の事業目的として「FX」と書くのはやめた方が良いです!
なぜなのでしょうか?また、FXと書かない方が良いのであれば何と書けば良いのでしょうか、以下で見ていきましょう。
定款とは?
定款とは、その会社を運営するにあたって基本となる事項を定めたものの事です。
定款に定められる主な事項としては、以下の様なものが有ります(以下は必ず定款に記載しなければならない「絶対的記載事項」です)。
- 事業の目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額(関連記事:資本金の意味や決める時のポイント)
- 発起人の氏名又は名称及び住所
- 発行可能株式総数
なお、定款の記載事項には「絶対的記載事項」の他に以下の2つの種類の記載事項がありますよ。
- A「相対的記載事項」→「会社が負担する設立関連費用」や「株式の内容に関する定め」等の様に定款で定めなければ有効にならない事項のこと
- B「任意的記載事項」→「事業年度」や「機関構成」、「株主総会に関する事項」等の様に、定款に記載しなくても無効になる訳ではないが会社が自主的に追加記載する事項のこと
この記事で解説していくのは、絶対的記載事項の1つである「事業の目的」ですね。以下で、FX法人の定款に記載する事業目的について見ていきましょう。
FX事業で法人化する際、定款の事業目的はどうする?
FX事業で法人化する際には、定款の事業目的をどの様にすれば良いのでしょうか。以下で、定款作成時のポイントをいくつか紹介します。
FX以外にもいくつか書く!
FX法人の定款には、事業目的として何を書けば良いのでしょうか。
FXをする為の会社なのだから、「事業目的はFXだけでいいのでは?」と思うかもしれませんが、それはやめた方が良いでしょう。
なぜなら、FXは世間的に決して信用度が高いとは言えないからです。事業として行っているとはいえ投機的な側面が大きいので、「貸したお金はきちんと返って来るのだろうか」、「事務所の家賃は毎月滞り無く払ってくれるのだろうか」と取引の相手方を不安にさせてしまいます。
クレジットカードを作る際にも、事業の目的がFXだけだと審査で落ちてしまう可能性が高いでしょう。中にはFXで多額の利益を得ている方もいるでしょうが、「世間的にはまだまだ投機として見られている」、という事ですね。
では、どうすればいいのでしょうか。
解決策はとても簡単で、FX以外の事業目的もいくつか書いておけばOKです。定款の事業目的には「実際にやっている事だけを書く」という決まりは有りません。「今後する予定の事業」や「する可能性の有る事業」を書いてもOKです。
「色々な業務をする会社で、FXもしてますよ」とアピールをしておく訳ですね。
但し、定款の目的が多過ぎると逆に「この会社は何の会社なんだ?」と不審がられてしまいます。目的は大体5〜6個程度、多くても10個以内にしておいた方が良いでしょう。
なお、事業目的の最後の項目として「前各号に附帯関連する一切の事業」と書いておけば、目的に書いていない事業内容も幅広くカバーする事が可能ですよ。
FX事業を行う上で最低限必要な目的〜FXとは書かない!〜
では、FX事業をする上で定款に最低限記載しておくべき事業目的は何でしょうか。「FXをするのだからFXと書けばいいのでは?」と思うかもしれないですが、それは違います。
定款に「FX」と書くと、法務局での登記時に弾かれる様です。一般的にFXは「外国為替証拠金取引」の略として使い、日常会話もそれで通じますが(世界的には、FXよりもForexの方が一般的)法務局の手続き上は扱いが異なります。
というのも、略語は業界によって様々であり、唯一無二の言葉ではないからです。FXと聞くと、大概の方は為替取引の事を思いつくでしょうが、業界によっては別の意味になる事も有り得ます。従って、FXと略すのではなく「外国為替証拠金取引」と書く必要が有るのです。
そうすると、ピンポイントで書くのであれば「外国為替証拠金取引」や「外国為替証拠金取引などの差金決済取引」となりますね。しかし、上述した様に事業目的は幅広くしておいた方が良いので、以下の様な項目の記載をお勧めします。
- 為替、株式、不動産、商品先物、金融の投資
- 為替及び株式等の運用、投資並びにそれらに関するコンサルティング
- 外国為替証拠金取引業務と国内外の株式、ファンドへの投融資
また、FXを表す事業目的を記載した上で、さらに他にする予定の事業やしてみたい事業も記載すると良いでしょう。例えば、以下の様な感じですね。
- 不動産コンサルティング業
- 飲食店の経営
- インターネット、その他通信ネットワークを利用した広告業及び通信販売業
FX法人の定款に記載する事業目的のサンプル事例
上で見て来た様に、FX法人を設立する際の定款に記載する事業目的のポイントは、大きく以下の2つです。
- 事業目的はFXの他にもいくつか記載する。
- FXと略さずに、「外国為替証拠金取引」や「外国為替取引」等の文言を使用する。
この2点を踏まえた上で、FX法人の定款サンプルをいくつか見てみましょう(多少のアレンジをしています)。
サンプル1:現に行う事業や将来的に行う予定の事業を記載した後で、FXについて記載した例
- 1.ネイルサロン、美容院、理容院など美容サービス業に関する店舗の経営
- 2.ミネラルウォーター、サプリメントなどの栄養食品の企画、製造、輸出入、販売ならびに販売指導
- 3.美容、理容、健康に関するコンサルティングおよび教育指導
- 4.コーヒーショップ並びにレストランの経営
- 5.外国為替証拠金取引に関する業務
- 6.前各号に附帯関連する一切の業務
サンプル2:現に行う事業を書いた上で、将来的に行う予定の事業及びFXについて順不同で記載した例
- 1.インターネットのホームページの企画、制作
- 2.インターネットを媒介とした市場のマーケティング業務
- 3.為替及び株式等の運用、投資並びにそれらに関するコンサルティング
- 4.ビタミン等の栄養素を補給した栄養補助食品の販売
- 5.前各号に附帯関連する一切の業務
サンプル3:FXについて記載せずに、現に行う事業のみを書いた例
- 1.企業における従業員の人事・労務・福利厚生・教育研修業務に関するコンサルティング
- 2.会計帳簿の記帳の代行、原価計算、決算書類の作成等の会計、経理に関する事務の請負
- 3.前各号に附帯関連する一切の業務
サンプル4:FXについて記載せずに、将来的に行う予定の事業のみを書いた例
- 1.カルチャー教室の経営
- 2.パソコン・インターネット・通信衛星を利用してする語学教室・学習塾の経営及びこれら器具機器のリース業務
- 3.飲食店の経営、プロデュース、コンサルティング事業
- 4.不動産の賃貸、管理事業
- 5.前各号に附帯関連する一切の業務
まとめ
いかがでしたか?FX法人を設立する際には、FX色を前面には出さない方が良い事が分かりましたね。
「自分がこれからやろうとしている事を堂々とは書かない方がいい」と言われると何だか複雑な気持ちになってしまいますが、あくまでも定款の事業目的に限った話です。
しかも、実際には定款に記載した事業しか出来ないという訳では無いので、そこまで深く考える必要は無いでしょう。
参考に、行政書士・社労士事務所「横浜ベイサイドオフィス」が、定款の事業目的をデータベース化して公開しているので興味の有る方は調べてみて下さい。