会社の決算は「1年に1回しか駄目」と思っていませんか?
確かにほとんどの会社は事業年度を1年にしていますが、半年決算にする事も可能なのです!
ここでは、半年決算にするメリットやデメリットを紹介していきます。業種業態、あるいは経営者の考え方によっては半年決算のほうが良いかもしれませんよ!
加えて半年決算法人の場合の「法人税や消費税の計算の仕方(考え方)」「交際費や減価償却費の計上の仕方」なども記事にしています。
ここで紹介するのは、決算期を変更をして一時的に半年決算になった会社ではなく、継続的に半年決算をする会社が前提です。決算期変更による節税やそれに伴うメリット・デメリット等は下記記事をご参照下さい。
⇒決算期変更(決算月変更)が節税になるってどういう意味?注意点・メリット・デメリットまとめ
事業年度は1年以内!半年決算もOK!
会社の事業年度は法人税法第13条第1項により、1年以内と定められています。
(事業年度の意義) 第十三条 (省略) ただし、これらの期間が一年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、その一年未満の期間)をいう。
従って、必ずしも1年にしなければならないという訳ではなく、1ヶ月決算や半年決算などでも問題有りません。とはいっても、現実的には以下のメリットやデメリットを踏まえて、「半年決算か1年決算のどちらか」になるでしょうけどね。
半年決算法人のメリット
多くの会社が採用している1年決算ではなく、敢えて半年決算を採用するメリットとしてはどの様なものが有るのでしょうか?
役員報酬の変更がしやすい!
会社が支払う役員報酬は、利益操作を防ぐ目的から制約が有り、一度金額を決定すると事業年度を通じて同額を支給しなければなりません(これを定期同額給与といいます。)(参照元:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁」)
具体的には、事業年度開始日から3ヶ月以内に1度だけ(事業年度終了後に開催される株主総会決議の後で)変更する事が可能です。
1年決算の場合、問題無く役員報酬を変更するタイミングが年に1回しか有りません。
一方で、半年決算の場合は年に2回定時株主総会を開催する事になるので、役員報酬も年に2回変更する事が出来るのです。
3月決算の会社(役員報酬は月50万円)で、10月に大きな利益が発生したケースを想定。
1年決算の場合は、10月に利益が出ても既に事業年度開始から3ヶ月以上経過しているので、役員報酬を変更する事は出来ません。
一方で、3月・9月決算の場合は、11月開催の株主総会で12月分から役員報酬を変更(50万円⇒70万円)する事が出来ます。
その結果、年間の役員報酬はそれぞれ以下の通りです。
- 1年決算⇒50万円×12ヶ月=600万円
- 半年決算⇒50万円×8ヶ月(4月〜11月)+70万円×4ヶ月(12月〜3月)=680万円
税率(法人税+地方税)を30%とすると、役員報酬を変更した事による節税額は(680万円−600万円)×30%=24万円となります。
会社の利益は役員報酬の金額によって大きく左右されます。年に1回しか役員報酬を変更出来ないよりは、年に2回変更出来る方が良いですよね!
役員の数を増やすタイミングが増える!
役員を新たに招き入れる場合、その役員は株主総会の決議によって選任されます(会社法341条)。
株主総会が年に2回実施されれば、役員を増やすタイミングも増える事になりますね。
半年決算法人のデメリット
では、半年決算にするデメリットにはどの様なものが有るのでしょうか?
事務負担が増える
事業年度が終わると、2ヶ月以内に確定申告(法人税・消費税・地方税)をしなければなりません(参照元:申告と納税|国税庁)。
1年決算の場合は年に1回の確定申告で済みますが、半年決算の場合は年に2回確定申告をしなければならなくなるので、それだけ会社の事務負担が増えてしまいますね。
税理士への報酬が増える
半年決算の導入により確定申告の回数が増えれば、通常は顧問税理士に支払う報酬も増える事になります。
単純に申告時の作業量が倍になる訳ですから「期間が半分なのだから、報酬も半分で!」というワガママは通じないでしょうね・・・。
従って、役員報酬をうまく見直す事で得られた節税効果と、税理士への報酬とは比較した方が良いでしょう。節税効果よりも税理士報酬の増額分の方が大きければ、半年決算にする意味が無いですからね。
半年決算の場合の税率や費用の計上など注意点まとめ
以上のようなメリット・デメリットのある半年決算ですが、半年決算にすると法人税率や費用の計上の仕方が1年決算の場合と異なる部分が出てきます。
影響が大きい以下の4点について詳しく見ていきましょう。
- 法人税
- 交際費
- 減価償却(一括償却資産や少額減価償却資産の取扱い含)
- 消費税
法人税の金額の計算の仕方
中小企業(※)は、大企業と比べると法人税の税率が軽減されています。
※:中小企業とは「期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人」の事です(法人税法第66条第1項)。
具体的には、年間所得800万円までが15%(軽減税率)で、800万円を超えると超えた部分に関しては23.2%(標準税率)となります。
「半年決算にすれば半年毎に800万円までの税率が低くなる」と思うかもしれませんが、残念ながらそうではありません。
あくまでも1年間で800万円までの所得が対象となっているので、半年決算の場合は「800万円÷12ヶ月×6ヶ月=400万円」が軽減税率の対象となります。(租税特別措置法第42条の3の2第3項)
計上可能な交際費の金額
中小企業の場合、交際費として損金算入出来る金額は年間800万円まで(※)となります(参照元:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁)。
※:「交際費のうち飲食代合計の50%に相当する金額を損金にする方法」との選択適用が可能です。
この800万円という金額には、「800万円に該当事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額」という前提が有るので、半年決算の場合は「800万円×6ヶ月÷12ヶ月=400万円」となります。
従って、半年決算にしても交際費として損金に算入出来る金額に大きな影響は有りません。
但し、「1年間の交際費合計が800万円だったけど上半期が700万円で下半期が100万円だった」、という様なケースでは、半年決算だと損をする事になりますね・・・。
半年決算と減価償却
「使用可能年数が1年以上のもの」及び「取得価額が10万円以上のもの」を購入した場合、減価償却により耐用年数にわたって損金処理をしていく事になります(参照元:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|国税庁)。
なお、主な減価償却(定額法と定率法の場合)の計算方法は以下の通りです。
- 定額法・・・取得価額×定額法の償却率
- 定率法・・・未償却残高×定率法の償却率
しかし、この償却率は事業年度が1年のケースを想定しているので、半年決算の場合は自分で計算をし直さなければなりません(参照元:4 単体納税に係るその他の取扱い|国税庁)。
具体例を見てみると、定率法で耐用年数が6年の減価償却資産(例:新車の自家用車)を購入した場合、減価償却率表では0.333となっていますが、半年決算の場合は0.167(0.333÷12ヶ月×6ヶ月)を使用する事になります。
3月決算(半年決算の場合は3月・9月)の会社が4月1日に電気設備工事(耐用年数15年・償却率0.067)をして100万円支払ったケースを想定。
決算単位 | 減価償却費の計算 |
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1年決算の場合 | 1,000,000円×0.067=67,000円 |
半年決算の場合 | 【9月期】1,000,000円×0.034=34,000円 【3月期】1,000,000円×0.034=34,000円 ⇒12ヶ月合計68,000円 |
3月決算(半年決算の場合は3月・9月)の会社が4月1日に新車の自家用車(耐用年数6年・償却率0.333)を100万円で購入し、同月に事業の用に供したケースを想定。
決算単位 | 減価償却費の計算 |
---|---|
1年決算の場合 | 1,000,000円×0.333=333,000円 |
半年決算の場合 | 【9月期】1,000,000円×0.167=167,000円 【3月期】833,000円×0.167=139,111円 ⇒12ヶ月合計 306,111円 |
1年決算と半年決算では、同じ12ヶ月でも償却費の金額は異なる事が分かりますね。但し、減価償却では最終的に取得価額全額が損金となるので、損金になるタイミングのズレはあるものの、損金になる金額の合計額に差は有りません。
半年決算と一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、法定耐用年数にわたって減価償却をする事も出来ますが、一括償却資産として取得後3年間にわたって3分の1ずつ(事業年度の月数÷36ヶ月)損金算入する事も可能です。(法人税法施行令133条の2第1項)
なお、1年決算の場合は事業年度の月数が12ヶ月なので3分の1となりますが、半年決算の場合は事業年度の月数が6ヶ月となるので、1事業年度に損金処理するのは取得価額の6分の1ずつという事になりますね。
少額減価償却資産の取扱いはどうなる?
青色申告をしている中小企業が取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合、事業の用に供した事業年度に損金処理し、確定申告書の別表16(7)にその明細を記載する事を条件に、少額減価償却資産の特例として「一括経費処理」が認められています。
一括で経費にする事が出来るのは1事業年度当たり300万円が上限ですが、事業年度が1年に満たない場合は事業年度の月数分までしか適用出来ません。
従って、半年決算の場合、一括で経費にする事が出来るのは合計で150万円(300万円×6ヶ月÷12ヶ月)までです。
半年決算と消費税の基準期間
消費税は、原則として基準期間の課税売上が1,000万円を超えているかどうかで納税義務の有無が決まります。
この基準期間は前々事業年度の事を指しているのですが、基準期間が1年に満たない場合については、消費税法第9条2項2号で以下の様に定められています。
基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から当該基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額を当該法人の当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額
つまり、「事業年度の課税売上を1ヶ月単位にした後で12をかけて年換算する」という事です。
例えば、半年決算の会社で基準期間の売上が600万円(税込)だった場合、消費税の納税義務の判定をする際には1,111万円(600万円÷108×100÷6ヶ月×12ヶ月)を使用するので、課税事業者となります。
従って、新設法人で半年決算を導入すると、新設法人の消費税納税の免除の特例の期間が短くなるというデメリットが生じます。通常2年免除のところ、1年で免除期間が終わってしまう可能性があるというコトです。(参考:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁)。
この辺りはご注意下さい。
最後に
多くの会社が深く考えずに1年決算を採用していますが、半年決算を採用する事で役員報酬を効率的に改定し、節税につなげる事が可能となります。
半年決算にする事で増加する事務量や顧問料と比較した上で、1度半年決算の導入を考えてみてはいかがでしょうか。