死亡した家族の定期預金の解約処理はどうすればいい?遺産相続との関係も。

相続時の預金解約記事のサムネイル

定期預金を預け入れている本人(口座名義人)が死亡した後で、定期預金を解約しようと銀行に行ったら窓口で断られたと、いう話をよく聞きます。

口座名義人が亡くなると、定期預金の口座は凍結されるので遺族は勝手に引き出したり解約したり出来ません。

葬式費用や入院費用の支払いなど何かとお金が必要になるので、当座の資金分だけでも何とか引き出させて欲しい!と思った方もきっといますよね。

では、残された家族はどのようにして定期預金の解約処理をすればいいのでしょうか。また、預金は相続財産になるので相続税の課税対象ですが、定期預金はどうやって評価をすればいいのでしょうか。

以下で見ていきましょう。

目次

口座名義人(本人)が亡くなったら口座は凍結される!

金融機関は口座名義人が亡くなった場合、即座にその預金口座を凍結して使用出来なくしてしまいます。

これは、亡くなった方の預金が相続財産となるので、「一部の相続人が預金を勝手に引出して、他の相続人の分を使ってしまう事を防止する」のが目的です。たまに「嫌がらせだ!」と思ってしまう方もいる様ですが、そういう訳ではなく単に金融機関のルールに則って凍結しているだけです。

もちろん、口座が凍結されたからといって残高が無くなってしまう訳ではないので、後述する手続を経ればお金を引き出す事が可能ですよ。また、葬式代や故人の入院費相当額程度であれば引出しに応じてくれる金融機関も有ります(引き出し可能額は金融機関によって異なります。)

ちなみに、役所に死亡届を出したからといって、その情報が金融機関に流れる訳では有りません。基本的には、行員と口座名義人の家族との会話や新聞の訃報欄などでその事実が発覚する事になります。

従って、中には金融機関が口座名義人の死亡した事実を知らず、いつまでたっても凍結されない口座も存在しているでしょうね・・・。

金融機関同士で死亡者の情報を共有している訳では無いので、口座凍結のタイミングは金融機関によって異なります。

定期預金と相続の関係〜一部の相続人からの払い出し請求は却下される!?〜

口座名義人が亡くなった場合、その預金は一体だれのものになるのでしょうか?

この点、平成28年12月19日の最高裁大法廷の決定により、「預貯金は遺産分割の対象であり、機械的に法定相続割合で分配されるものではない」とされ、過去の判例が変更となりました(参照元: 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 | 裁判例結果詳細 | 裁判所

つまり、遺産分割が確定するまでは誰のものでも無いという事です。

しかし、金融機関に被相続人の死亡が伝わると銀行口座はロックされます。生活費を故人の資金に頼っていた遺族は生活に困ってしまいますね。何なら故人の葬式費用も出せないかもしれません。

そこで、(上記の判決を受けて)、改正民法において「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」というものが出来ました。具体的には以下の計算式で算出された金額までは引出が可能ですよ。

相続預金の払い戻し制度の計算式

単独で払い戻しができる金額(※口座ごと、定期預金は明細毎)
=相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分

※同一の金融機関からの払い戻しは150万円を上限とする

制度の利用にあたっては以下の3つの書類が必要です。

  • ①被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • ②相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • ③預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書

何も事前に準備せず、ただ単純に相続人だからお金を引き出したい!と言っても却下されるので、事前に金融機関にご相談の上、指示を仰ぎながらお金を引き出すようにしてくださいね。

なお、改正民法においては上記制度とは別に「家庭裁判所の判断による払い戻し制度」も設けられました。改正民法で設けられた2つの払い戻し制度に関しての詳細を下記記事で書いておりますので、そちらもご参照下さい。

定期預金の解約時に必要な手続・書類

まずはその定期預金口座が有る金融機関の支店に、手続き方法を問い合わせるようにしましょう(手続自体は故人の口座が有る支店に行かなくても、最寄の支店で手続きをしてもらう事が可能な場合もあります。)

基本的には、「金融機関に連絡電話もしくはWEBフォーム⇒必要書類の準備⇒窓口で書類の提出⇒解約」というステップとなります。

なお、解約手続き時に必要な書類は遺言書の有無によって異なるので、以下で、遺言書が有る場合と無い場合に分けて必要書類を見てみましょう。

金融機関によって手続きや必要な書類が異なる場合も有るので、事前に問い合わせするようにして下さい。また、最近はネットで完結出来る金融機関もあります。

遺言書が無い場合

まず、遺言書が無い場合は、以下の書類が必要となります。

  • 口座払戻請求書(銀行所定のものが有ります)
  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 ※1
  • 相続人全員の戸籍謄本 ※1
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書 ※2
  • 解約する預金口座の通帳と届出印 ※3

※1:平成29年5月29日から全国の法務局(登記所)で「法定相続情報証明制度」が始まり、法務局に戸除籍謄本等の束と共に法定相続情報一覧図を提出すれば、一覧図に認証文を付した写しをくれる様になりました。この写しを提出すれば、故人の戸籍謄本の提出は不要です。なお、被相続人の戸籍謄本で相続人全員が確認出来る場合は、相続人の戸籍謄本を別途提出する必要は有りません。

※2:基本的には6ヶ月以内に発行されたもので大丈夫ですが、融資取引をしていた場合は3ヶ月以内の印鑑証明書が必要となります。また、海外在住の方は印鑑証明書の代わりに大使館や領事館等で発行されるサイン証明書が必要です。

※3:貸金庫が有る場合は貸金庫の鍵も持って行きましょう。なお、キャッシュカードや貸金庫のカード等は相続の手続きでは不要です。同じカードは今後使う事が出来ないので、ハサミで切断して捨ててしまってOKですよ。

遺言書が有る場合

一方で、遺言書が有る場合は以下の書類が必要となります。

  • 口座払戻請求書(銀行所定のものが有ります)
  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 ※1
  • 遺言執行者選任審判書(遺言書で遺言執行者が指定されていない場合)
  • 遺言書(家庭裁判所の検認が済んだもの)
  • 検認済証明書
  • 受遺者(預金の払い戻しを受ける方)と遺言執行者の印鑑証明書 ※2
  • 解約する預金口座の通帳と届出印 ※3

印の注釈は「遺言書が無い場合」と同じです。そちらを参照してください。

ちなみに、戸籍謄本や印鑑証明書といった書類は原本の提出が必要です。

預金口座が複数の金融機関に有る場合は、戸籍謄本や印鑑証明書が何通も必要となり発行手数料も高くなってしまうので、書類提出時に「原本は返していただけますか?」と確認する様にしましょう。そうすれば、基本的には原本を返してもらう事が出来ますよ。

主要銀行の相続手続き案内

参考に、以下で主要な銀行の相続手続き案内ページのリンクを貼っておきますね。

生前に定期預金を解約しておくのもアリ!?

口座名義人が死亡した後の金融機関での面倒な手続を省きたいのであれば、生前に解約をしてしまうというのも1つの手ですね。

本人が解約手続き出来るのであればベストですが、難しい場合は配偶者等が代理人として手続をする事になります。その場合は、金融機関によって必要書類が異なりますが、基本的には代理人の本人確認書類や委任状等が必要となるでしょう。

なお、最近は振り込め詐欺等の金融詐欺が多発しているので、委任状が有れば必ず定期預金の解約に応じてくれるという訳では有りません。残高が高額な場合は、代理人が解約するのを断られるケースも有る様です。

定期預金は相続税の対象!評価方法は?

家族が亡くなり、財産を相続すると相続税を納付しなければならない事が有ります。今まで相続税というと「お金持ち家族が払うものだから、自分の家は関係ない」と思っていた方が多いですが、最近はそうでも有りません!

平成27年1月1日以降に発生した相続については、相続税の基礎控除が「5,000+法定相続人の数×1,000万円」から「3,000万円×法定相続人の数×600万円」に引き下げられています相続税法第15条第1項)

その結果、今まで相続税と縁が無かった一般家庭でも相続税を納付しなければならないケースが増えているのです。参考までに、平成26年に相続税の申告書を提出した方は約5万6千人でしたが、平成27年は約10万3千人と一気に増えています(参照元:国税庁「平成27年分の相続税の申告状況について」)

従って、相続税の課税対象や計算方法もある程度は知っておくべきですね。

以下では、定期預金に限定して相続税の話を進めていきます。

相続税は、死亡した方の財産を相続した場合にその財産に対して課税されます。そして、ここでいう財産には、一部非課税財産があるものの、現金や預貯金、不動産、有価証券、著作権等の金銭で見積もる事が出来る全てのものが含まれます(相続税法第2条)

従って、亡くなった方が持っていた定期預金も当然に相続税の課税対象となります。

では、相続財産としての定期預金はいくらで評価すれば良いのでしょうか。

この点、相続財産は課税時期(死亡日)の時価によるものとされています財産評価基本通達1)

定期預金を解約すると、額面の金額に解約時までの利子分(既経過利息と言います)を上乗せして返って来るので、額面+利息分が定期預金の時価ですね。

具体的には、定期預金は以下の計算式によって評価する事になります(財産評価基本通達203)

定期預金の相続税評価額の計算式

相続発生時点の残高+既経過利息の額—源泉所得税相当額(

:利子額×20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・地方税(利子割)5%)

なお、実際には自分で既経過利子を計算する必要は有りません。金融機関に残高証明書を発行してもらう際に「既経過利息を記載して下さい」とお願いすれば証明書に記載してくれますよ(最近では、言わなくても記載してくれる金融機関も増えて来ています)。

ちなみに、具体的な金額は明示されていませんが、既経過利息の金額が課税上弊害の無い程度に少ない場合は額面で評価しても良い事になっています。

参考:普通預金については、通常は既経過利息が少ないと考えられるので額面で評価して問題無いですが、残高が多く既経過利息も高額になる場合は評価額に含める必要が有ります。

まとめ

口座名義人が亡くなると、定期預金を含む預金口座は凍結され、解約手続きが終わるまでは基本的にお金を引き出す事は出来ません。

いざ解約手続きをするとなった際にスムーズに話が進む様に、必要書類にどういったものが有るかはしっかりと把握しておきましょう。

なお、定期預金は解約して普通預金等に振り替えると普通預金の利率となってしまいますが、名義変更をして定期預金として預入続けるのであれば、契約時の定期預金利率を維持する事が出来ます。

金利が高いときの定期預金なのであれば、名義変更をして持ち続けた方が良いかもしれないですね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次