72の法則とは、資産を複利で運用した時に“元本を2倍”にするために必要な年数(又は金利)が簡単に分かる法則・計算式のことを言います。
計算式はこちら。
金利(%)×年数=72
この計算式を使うことで、元本を2倍にするために必要な「金利」もしくは「年数」が簡易的に分かるようになります。(金利もしくは年数のどちらかが分かっている事が前提です。)
72の法則を知っていると、投資初心者の友人なんかにちょっと良い顔が出来ますよ。意外に知らない人が多いので、教えてあげると喜ばれるかもしれません。
資産運用の世界では、他にも100の法則や115の法則というものもあるので、そちらも紹介します。
【前提】単利と複利の違い
72の法則の計算式を見る前に、前提として単利と複利の違いを見ておきましょう。
72の法則は“複利の利回り”を使って計算する法則ですから複利の意味を知っておくのは大事です。
単利のイメージ
単利とは、利息を計算するときに用いる計算方法の一つで、当初元本だけを対象にして利息がいくら発生するか?を計算する方法です。金融資産(定期預金や株、債券など)から得られるリターンを再投資せず元本部分のみを投資に回し続ける場合に得られる利息を計算する方法ということですね。
たとえば、「元金:100万円、金利:3%」だと仮定します。計算方式が単利の場合に得られる利息額は以下の通り。
- 1年目→3万円(100万円✕3%)
- 2年目→3万円(100万円✕3%)
- 3年目→3万円(100万円✕3%)
- 4年目→3万円(100万円✕3%)
- 5年目→3万円(100万円✕3%)
- 6年目以降もずっと3万円!
見れば分かるように毎年同じです。これが単利です。
複利のイメージ
反対に”複利”では貰ったリターンを再投資します。1年後にもらった3万円を使い切ることなく元本にそのまま追加するという事ですね。
この時、2年目の投資元本は103万円となり、翌年末には3.09万円(103万円×3%)の金利が貰えます。単利の場合と比較して”900円”多くのリターンが得られましたね。
なんだ・・・たったの900円か!と侮る事なかれ。
この数字は年が経つごとに大きくなっていきます。
3年目の投資元本は106.09万円(100万円+3万円+3.09万円)ですから、3年目にもらえる金利は3.18万円(端数切り捨て)になります。3年目は単利の場合と比べて1,800円も多く金利を貰えましたね。
これを何年も続けていくと、単利と複利では資産の増え方に大きな違いが出てきます。
グラフで上で説明したことを表してみたので見てください。「元本100万円、金利3%」の場合です。
単利の棒グラフは単純に元本100万円に毎年の金利3万円を足し合わせたものですよ。
徐々にですが、単利と複利の場合で資産額に大きな差が出ている事がわかりますね。
10年目以降の資産額の推移がこちら。
運用年数 | 単利 | 複利 | 両者の差額 |
---|---|---|---|
10年 | 130万円 | 134万円 | 4万円 |
15年 | 145万円 | 156万円 | 11万円 |
20年 | 160万円 | 181万円 | 21万円 |
25年 | 175万円 | 209万円 | 34万円 |
30年 | 190万円 | 243万円 | 53万円 |
35年 | 205万円 | 281万円 | 76万円 |
40年 | 220万円 | 326万円 | 106万円 |
50年 | 250万円 | 438万円 | 188万円 |
10年だと差は4万円なので大したことないですが、これが30年だと53万円の差、50年だと188万円の差となります。年数が経てば経つほど馬鹿にならない差になっていることが分かると思います。
つまり、複利は運用の期間が長くなればなるほど威力発揮するという事ですね。
あのアインシュタインも“複利こそが人類最大の発明だ!”と発言したそうですから破壊力は抜群です。われわれ一般人も、ぜひ複利の力を借りながらお金を増やしていきたいところですね。
72の法則の計算式を使ってお金が2倍になる期間を計算する
72の法則の計算式は本当にシンプルで簡単です。
①金利(%)×年数=72
両辺を「金利(%)」で割ってあげると
②年数=72÷金利(%)
となります。ただし、あくまでも複利で運用した場合ですよ。単利の場合は100の法則を使ってお金が2倍になる期間を出します(詳細は後述)
たとえば、A商品の金利が5%だったら「72÷5%=14.4年」となりますので、A商品に100万円を投資すると14.4年後には約200万円まで資産が増加することになります。7%の商品だったら「72÷5%=10.3年」で資産額は2倍になります。
以下で、パーセンテージごとに資産が2倍になる年数をまとめたので、商品を選ぶ時の目安にしてみて下さい。
金利 | 資産が2倍になる年数 |
---|---|
0.02% | 3,600年 |
0.2% | 360年 |
2% | 36年 |
3% | 24年 |
5% | 14.4年 |
7% | 10.3年 |
10% | 7.2年 |
12% | 6.0年 |
15% | 4.8年 |
計算式を入れ替えれば目標利回りを決定するのにも役立つ
先ほどは”お金が2倍になる年数”を計算するために、72の法則を使いましたが、計算式を入れ替えると”お金を2倍にするために必要な金利”もすぐに出せるようになります。
計算式はこちら。
たとえば、あと30年の間に資産を2倍にするためには何%で運用すれば良いのか?を計算する時に使えますね。
この場合、答えは2.4%(72÷30)です。平均して年利2.4%で資産を運用する事ができれば、30年後には資産を2倍にすることが出来ます。運用できる期間が決まっている場合などで、目標資産額がある時に使えますよ。
72の法則を使う時の注意事項
72の法則は非常に便利な計算式ですが、あくまでも簡易な計算式なので”誤差”が発生することに注意しておきましょう!
一般的には、金利が8%の時に最も誤差なく計算できる法則であり、誤差の小さい範囲で計算が行えるのは8%の上下2%くらいまでだそうです。(つまり、6%~10%の間であればかなり正確に計算できる)。
【脱線】72の法則を知っていれば借金は怖くて手が出せない
私は”72の法則”を知ってからというもの借金がとても恐くなりました。
なぜか?
借金が雪だるま式に増えていくからです。
消費者金融とかクレジットカードのキャッシングって金利が10%とか15%程度がザラにあるんですよね。仮に金利10%でも、72の法則に当てはめればたったの7.2年(72÷10%)で借金額が2倍になるんですよ!
借金の場合は積立投資と違って毎月返済しますので、実際に2倍になるのはもっと長い年数が必要ですがそれでも直感的にありえない利息を払っている事は分かると思います。
72の法則と100の法則の違い
100の法則とは、資産を”単利”で運用した時に元本が2倍になる年数(又は金利)を計算する時に使われる法則です。
年数×金利(%)=100
単利で計算するのか複利で計算するかの違いが”72の法則”と”100の法則の違い”です。
試しに、金利ごとに資産を2倍にするために必要な年数を比較してみました。小数点未満の端数は四捨五入しています。
金利 | 72の法則(複利) | 100の法則(単利) |
---|---|---|
1% | 72年 | 100年 |
2% | 36年 | 50年 |
3% | 24年 | 33年 |
4% | 18年 | 25年 |
5% | 14年 | 20年 |
6% | 12年 | 17年 |
7% | 10年 | 14年 |
金利2%だと資産を2倍する年数が14年も違っていますね。やはり、資産運用の鍵は複利での運用という事です。
投資信託も分配金再投資のものを選んだほうが老後の備えになることが分かります。
72の法則と115の法則の違い
72の法則が資産が2倍になる年数を求める法則であるのに対して、115の法則は”資産が3倍になる年数(又は利率)”を求める法則です。
年数×金利(%)=115
(こちらも複利で運用した場合の法則です)
あとは72の法則と同じように計算式を入れかえれば、資産が3倍になる年数(又は金利)を簡単に出すことができます。2倍になる年数と3倍になる年数がパッと出せるようになるとかなり便利ですので、是非使い倒しましょう!
144の法則や216の法則は正確性に欠ける
一応、144の法則(資産が4倍になる年数・金利)、216の法則(資産が6倍になる年数・金利)もあるのですが、144の法則と216の法則は結構おおきな誤差が発生します。
たとえば、利回り3%で216の法則に当てはめると、計算式上は72年(216÷3)で資産が6倍になります。
しかし、実際にExcelで計算してみると、利回り3%で資産を6倍にするのにかかる年数は約61年だと分かります。
144の法則も216の法則も、単純に72の法則を倍にしているだけの法則なので、正確ではないという事ですね。
まとめ
以上、72の法則について詳しく見てきました。まとめはこんな感じ。
- 単利と複利では資産の増え方が大きく変わる
- 72の法則は複利で運用した場合に資産が2倍になる年数(又は金利)を一発で出す計算式
- 100の法則は単利で運用した場合に資産が2倍になる年数を出す計算式
- 115の法則を使えば資産が3倍になる年数(又は金利)も出せるようになる
いずれの法則も絶対に覚えなければならない!という訳ではないですが、覚えておくとたまに便利です。