会社の決算月はいつにしていますか?
- 「日本は3月決算の会社が多いから、3月決算にしておこう」
- 「税理士に相談したら9月決算が良いと言われたから9月決算にしよう」
といった風に、あまり深く考えずに決算月を決定している方も多いのではないでしょうか。
事業年度は会社の節目を決める重要なポイントです。適当に決めるのではなくある程度合理的な理由を持って決めた方が良いでしょう。決める根拠は「繁忙期を避ける」、「年末年始に決算手続きが被らない様にする」など何でも構いません。
ここでは、法人の事業年度・決算月を何月にすべきかを考える手助けの為に、「税務調査リスク」という点から主観的にランキング化(ベスト3)して見ていく事にしましょう。
そもそも事業年度(会計年度)や決算日とは?
会社の事業年度とは、会社の財産や損益の計算をする「会計期間」の事で、決算日は事業年度の最終日の事です。「当社の決算日は3月末です」といった場合、その会社は4月1日〜3月31日が1事業年度となります。
本来であれば、会社の損益などは会社設立から会社が無くなるまでの期間の合計で計算すべきですが、会社は基本的にいつまでも存続する事を前提に事業をしていますよね(これを「継続企業の前提」と言います)。
そうすると、会社が潰れない限り決算が出来ない事になってしまい不都合が生じます。そこで、事業年度を決める事で一定期間で区切って損益や税金の計算をする様になっているのです。
現に、上場会社の中にはベビー用品の西松屋チェーン(2月20日決算)や電気機器関連のキーエンス(3月20日決算)の様に、月末以外の決算日を採用しているものも有ります。
但し、売上・仕入等の締め日を月末に設定している会社が多いので、決算日を月末以外にすると何かと決算手続き等が面倒になります。従って、よほどの事情が無い限りは決算日は末日にした方が良いでしょうね。
ちなみに、1事業年度の長さについては法人税法第13条で最長1年(※)と決められているだけなので、半年決算や毎月決算もしようと思えば可能です。
※:法律上は1年以上の事業年度に設定する事も可能ですが、法人税等の計算は1年で区切って計算しなければなりません。
事業年度はいつがいい?税務調査リスクから見た決算月ベスト3!
税務調査が好きだと言う方はまずいないでしょう。出来ればみんな入って欲しくないですよね。
悪い事をしている人は論外として、何ら悪い事をしていない人でも”会社に税務調査が入る!!”と言われると、何だかドキドキしてしまうのではないでしょうか。
会社経営をしている限り、みんな税務調査が入るリスクを抱えています。特に以下の様な会社は、税務調査の入る可能性が他の会社と比べると一定程度高いと言えるでしょう。
- 法人を設立をしてから3年経過した会社
- 年度損益の増減が激しい会社
- 急激に成長している会社
- 先代から代替わりした会社
- 税務署が重点的に調査している業種の会社
- 過去に税務調査で重加算税の課された会社
そして、上記に関わらず「決算月」によって税務調査が入るタイミングやリスクが変わるという考え方も有ります。そこで、以下では税務調査リスクからみた「好ましい決算月ベスト3」を見てみましょう。
3位:5月決算〜調査を終えて年末年始を気持ちよく過ごそう〜
税務署の事務年度は7〜6月の1年で、7月〜12月が上期、1月〜6月が下期です。そして、上期と下期に実施する税務調査の調査先は、その会社の決算月によって基本的に以下の様に分かれています(必ずこの期間で実施されるという訳ではありません)。
- 上期(7〜12月)に行われる税務調査・・・2〜5月決算の法人
- 下期(1〜6月)に行われる税務調査・・・6〜1月決算の法人
会社の確定申告書は決算日後2ヶ月以内に提出され(参照元:国税庁「申告・納付等の期限」)、上期に行う調査は2月決算分から申告書が提出され次第、随時選定・着手していく事になります。
税務調査は、確定申告書が提出されたからといってすぐに税務調査に入る訳ではありません。KSK(国税総合管理)と呼ばれるシステムに決算情報を入力し、決算内容のチェックや申告書のファイリングといった事務作業が終わってから調査に入る企業を選びます。
従って、5月決算の会社に税務調査が入るのはどうしても10月後半や11月頃になってしまいがちです。
税務署としては可能な限り年をまたいで調査をしない様に心がけてはくれているので、他の月よりもさくっと調査が終わる可能性が多少高く感じますね。さくっと税務調査を終わらせて気持ちよく年末年始を過ごしましょう!
とはいっても、大きな問題が発覚した様な場合は調査が入ったまま年越しする事も有りますけどね・・・。
2位:10月決算〜税務署が忙しい時期に合わせる!?〜
税務署内部は1月になると慌ただしくなります。というのも、年末調整の資料(法定調書合計表や支払調書etc)が一斉に納税者から提出されてきますし、2月16日〜3月15日は個人の確定申告期間なので、多くの納税者が税務署に訪れて来るからです。
従って、個人と法人とでは税務調査の管轄が違うものの(個人は個人課税部門、法人は法人課税部門)、1月〜3月の間にスタートする税務調査はあまり多くありません。
また、税務署内部が一段落ついて、さぁ税務調査に行こうと思っても今度は多くの税理士が3月決算法人の申告業務に追われています。顧問税理士が付いている場合は税理士が税務調査に立ち会うので、税理士との日程調整も必要なのですが、その税理士がうまく日程を確保する事が出来ないのです。
その結果、4月〜5月も思う様に税務調査が進まないケースが多い様ですね。そうすると、10月決算近辺の会社については調査に入るタイミングがなかなか確保しづらく、他の月と比べると税務調査が入る可能性は若干下がる様に感じます。
1位:1月決算〜税務署の定期異動時期を狙い撃ち!〜
税務署の事業年度は上述した様に毎年7月〜翌6月までで、税務署職員の定期異動は毎年7月10日に行われます。
そして、異動日をまたいで調査が続く事は基本的に有りません。これは、調査中に担当者が異動するのは避けなければならないですからね。
実際には調査が長引く可能性も考慮して、6月に入ってから調査が新たに始める事はあまり無いでしょう。1月決算の会社は3月末までに申告書が提出され、そこから内容のチェックが始まるので調査に入るとすれば5月中旬頃がメインとなりますよね。
引き継ぎ事項のまとめなどの事務作業もしないといけないので、調査官はなんとか6月中には調査にケリを付けようとする結果、調査自体が駆け足で行われる可能性が有ります。
まとめ
事業年度(決算月)をいつにすれば良いかについて、税務調査のリスクという側面から見てみました。
税務調査は法人を経営をしている限りどこにでも入る可能性は有ります。しかし、少しでも調査が入りにくくなる可能性に期待したい!という方は、ここで紹介した月を決算月として選ぶのも良いかもしれないですね。
なお、決算月は会社設立時に決めますがその後も株主総会決議を経る事でいつでも変更可能です(総会決議後定款の変更及び税務署等への届出が必要)。