会社の経費の支払いに個人のクレジットカードを利用しても問題ない?

社長個人のクレジットカードを経費に使う

会社の経費を支払う際に、クレジットカードを使う方は多いでしょう。しかし、法人名義のクレジットカードは発行時の審査が厳しい事も多く、設立間もない頃だと審査に落ちるという話もよく聞きます。

そこで、社長個人名義のクレジットカードを利用して会社の経費として処理したいと考える人は多いでしょう。

この点、結論から言うと社長個人名義のクレジットカードで支払したものであっても会社の経費として処理することは問題無いと言えます。

従業員が、会社の消耗品を立替払いするのと同じイメージを持って頂くと分かりやすいと思います。

しかし、注意点もあります。以下で細かく見ていきましょう。

目次

個人名義のクレジットカードでもOK!

クレジットカードでの支払は、現金払いかカード払いかといった支払の手段に過ぎません。

法人での経費として認められるかどうかは、支払の内容が法人の事業の為に使用されたものかどうかが重要なので、どの様にして支払ったかという事自体は経費性とは関係が無いです。

従って、社長個人名義のクレジットカードで経費の支払をしたとしても、特に問題有りません。この点に関して税務署から何か言われる事は特に無いでしょう。

経理上の処理(仕訳の切り方)

通常、社長や従業員が経費の立替をした場合は以下の様な処理をします。

経費精算の申請をした後日、精算をする場合
①立替したとき
特に仕訳無し

②経費精算の申請が有ったとき
経費項目××/未払金(役員借入金)××

③実際に精算したとき
未払金(役員借入金)××/現預金××

随時精算する場合
①立替したとき
特に仕訳無し

②精算をするとき
経費項目××/現預金××

そして、基本的にはクレジットカードで立替をした場合でも、上記の処理と変わり有りません。領収書を添付して経費精算をする事になります。

但し、分かりやすい様に帳簿の摘要欄には「社長個人名義のカード利用分決済」などと記載した方が良いでしょう。

クレジットカードの請求明細を基に経費処理するのもOK!

上述の様に、現金立替えでもクレジットカードによる立替えでも、基本的には経理処理に違いは有りません。しかし、クレジットカードを利用する度に経費精算するのが面倒という方もいるでしょう。

その場合は、月に1度送られて来るクレジットカード会社からの請求明細を基に計上するのでも構いません。

以下の様な仕訳を切れば大丈夫です。

①請求明細が届いたとき
経費項目××/未払金(役員借入金)××

②精算したとき
未払金(役員借入金)××/現預金××

参考:ETCを使って有料道路の通行料金を支払っている場合、請求明細には全ての取引が記載されます。1つずつ入力していくのはとても手間なので、1ヶ月分の合計金額で計上してしまっても問題無いでしょう。但し、その場合でも事業用の経費である事が説明出来る様に、明細には行き先等の記入をしておいた方が良いでしょうね。

なお、個人名義のクレジットカードの場合は事業に関係ない個人的な支出が含まれている事が有ります。しかし、個人的な支出は会社の経費になりません。

個人的な支出が含まれている場合は、その金額を省いて未払金として計上する様にしましょうね。可能であれば、個人用として使うカードと事業用に使うカードとを分けておいた方が良いでしょう。

また、クレジットカード会社によって締め日が異なるので、請求明細には毎月1日〜末日までの取引が掲載されているとは限りません。例えば、4月下旬に発行される請求明細に、3月20日から4月19日までの取引が掲載されているというケースも有り得ます。

これを3月決算の会社が全て未払計上してしまうと、4月利用分に関しては経費の過大計上となってしまいますよね。この様に、決算日をまたぐ場合には、決算日後の利用分を計上してしまわない様に注意が必要ですね。

カード明細だけ残して領収書は捨てても問題ない?消費税の仕入税額控除を受けるなら領収書や利用明細が必要!

たまに、1ヶ月毎に送られて来るクレジットカード会社からの請求明細だけを残して、領収書やレジで受け取る「ご利用明細」を捨ててしまっている経営者さんがいます。

確かに、カード会社から送られて来る請求明細を見れば何にお金を使ったのかは分かるので、それでも問題無い様な気がしますよね。

法人税の申告でも領収書は必要ですし保存も求められていますが(参照元:国税庁「タックスアンサー 帳簿書類等の保存期間及び保存方法」)、カードの請求明細が有れば利用した事実や日付、金額等が証明出来ます。

従って、事業に関係する支出である事が証明出来る限りは、基本的にはカードの請求明細でも問題にならないでしょう。

しかし、消費税を計算する上では領収書しくはご利用明細が必要なのです!

消費税の納税義務者は、預かった消費税(売上分)から支払った消費税(経費分)を控除して期末に納付する消費税額の計算をします。

そして、支払った消費税として計算上引く事を「仕入税額控除」というのですが、仕入税額控除を受けるには、帳簿に以下の記載をしておくとともに、これらが記載された領収書や請求書等の保存が必要です。消費税法第30条7〜9項)

  • 支払先の氏名又は名称
  • 支払をした年月日
  • 購入した資産やサービス等の内容
  • 支払った金額

この点、カード会社からの請求明細はあくまでもカード会社が作成したもので、支払った相手先であるお店等が交付した書類ではないですよね。

従って、消費税法の定める請求書等には該当せず、残しておいても仕入税額控除を受ける事は出来ないのです。

なお、カード利用時にお店が発行してくれる「ご利用明細」には上記の情報が記載されている事が一般的なので、これを残しておけばOKとされています。(参照元:国税庁「質疑応答事例 カード会社からの請求明細書」)

つまり、消費税を計算する上では、クレジットカード会社から送られて来る請求明細だけでは不十分で、お店が発行する領収書若しくはカードを使用した際に渡される「ご利用明細」を残しておく必要が有る、という事ですね。

なお、インターネットで買い物をしたりサービスの提供を受ける場合、領収書や請求書が発行されない事もよく有ります。この場合は、請求内容が分かるページをプリントアウトして保存しておくのも1つの手ですね。

とにかく、クレジットカード会社からの請求明細だけを残している場合は、税務調査で仕入税額控除を否認されたとしても反論出来ない、という事は知っておきましょう。

3万円未満の取引であれば領収書が無くても大丈夫!

クレジットカード会社から送られて来る請求明細だけでは不十分、という話をしました。

しかし、これには例外規定が用意されています。

1回の取引金額(購入金額)()が税込3万円未満の場合や、領収書等が発行されない事についてやむを得ない事情が有る場合には、上記の法定事項(やむを得ない事情が有る場合はその理由も必要)を帳簿に記載しておけば領収書や請求書等が無くても良い、という事になっているのです。(消費税法第30条第7項、消費税法施行令第49条第1項)

:3万円の判定は、商品毎ではなく、1回の取引毎に行います。(参照元:国税庁「消費税法基本通達 11-6-2」

参考に、やむを得ない場合とは以下の様なケースを指しています。

(1)自動販売機を利用して課税仕入れを行った場合
(2)入場券、乗車券、搭乗券等のように課税仕入れに係る証明書類が資産の譲渡等を受ける時に資産の譲渡等を行う者により回収されることとなっている場合
(3)課税仕入れを行った者が課税仕入れの相手方に請求書等の交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
(4)課税仕入れを行った場合において、その課税仕入れを行った課税期間の末日までにその支払対価の額が確定していない場合
 なお、この場合には、その後支払対価の額が確定した時に課税仕入れの相手方から請求書等の交付を受け保存するものとする。
(5)その他、これらに準ずる理由により請求書等の交付を受けられなかった場合

参照元:国税庁「消費税法基本通達11-6-3

つまり、クレジットカードでの取引が全て3万円未満であれば、敢えて領収書を残しておく必要は無いという事ですね。

但し、クレジットカードの請求明細に記載されている事柄だけでは、取引内容がいまいちピンと来ないケースも有ります。帳簿には内容を記載しているでしょうが、より万全を期す為に、可能な限り請求明細と領収書はセットで保存しておく様にしましょう。

消費税の規定上は、帳簿や請求書等を申告期限から7年間保存しなければならない事になっています。但し、6年目と7年目については帳簿か請求書等のどちらか一方だけを残しておけばOKです。(参照元:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁

まとめ

本文で見てきたように、会社での経費を個人のクレジットカードで支払う事自体には、なんら問題が有りません。

しかし、経費計上する際はしっかりと明細や領収書を残しておいて、税務署から後々何を言われても困らない様にしておきましょうね。

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