社宅家賃の会計仕訳と税務処理

社宅家賃

節税や従業員への福利厚生目的で、社宅制度を導入している会社をよく見かけます。従業員からしても、会社が借り上げして家賃を負担してくれるので大助かりですよね。

しかし、社宅家賃の全額を会社負担にしてしまうと、役員や従業員に対する給与として課税されてしまうので、一定の金額は給与等から控除して本人に負担してもらわなければなりません。

参考にどうぞ
社宅家賃を経費にする手順・コツ【規定類の作り方や相場観の考え方まで】 法人の節税対策としてよく使われる方法として、「社宅家賃を経費計上する」というものが有ります。 住居費は、会社の経営に関わらず役員や従業員個人に発生しているもの...

会社が支払った家賃や役員や従業員等が負担した社宅の家賃相当額は、どの様な会計・税務上の処理をすれば良いのでしょうか?

ここでは、社宅家賃に関わる仕訳や消費税の扱いなどを見ていきます。

目次

社宅家賃に関する仕訳の方法と消費税課税区分

以下で、社宅に関わる取引毎に仕訳や消費税の課税区分を見ていきましょう。

社宅の家賃を払った際の仕訳

まず、法人が社宅の家賃を家主(大家さん)に払ったときは、以下のような仕訳をきります(1ヶ月の家賃は8万円)。

は8万円)。

借方金額貸方金額
地代家賃80,000現預金80,000

参考:地代家賃を必ず使わないといけないという訳ではないので「社宅家賃」や「福利厚生費」といった勘定科目でも特段問題は有りません。

社宅の家賃を家主に支払ったときの消費税課税区分

消費税法上、住宅の貸付は非課税とされています。そして、社宅は住宅の1種なので会社が社宅を借りる際に支払う家賃は「非課税」です消費税法第6条第1項、同法別表第1十三)

但し、ウィークリーマンションなど1ヶ月に満たない契約(結果的に1ヶ月以上住んだとしても×)や借上の時点で用途(居住用or事業用)を明確にしていない場合は、課税対象となるケースもあるので注意が必要です(参照元:No.6226 住宅の貸付け|国税庁

共益費を支払った時の処理

不動産の賃貸借契約上、家賃とは別に共益費(※)を負担する事になっているケースがよく有りますよね。

※:マンションやアパートなどで共用部分にかかる管理料(エレベーターの運行費・共用部分の電気代等)の内、入居者が負担する金額。

この共益費については、家賃に含めて処理すればOKです。

例えば、家賃80,000円と共益費4,000円を毎月負担している場合は、以下のような仕訳となります。

借方金額貸方金額
地代家賃84,000現預金84,000

共益費の消費税課税区分

上記で紹介した住宅の貸付にかかる家賃には、共益費も含まれます。従って、家賃と共に支払う共益費についても消費税は非課税です(参照元:集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定|国税庁

但し、専用部分の水道光熱費を家賃とは別に収受する場合、これらの料金は「課税仕入」となります。

従業員から社宅家賃を徴収した際の仕訳〜逆仕訳は要注意!〜

給与を支払う際などに従業員から本人負担分を徴収した場合は、以下の仕訳となります。

仕訳となります。

借方金額貸方金額
現預金40,000受取家賃
(or雑収入)
40,000

この時に注意しなければならないのが、「逆仕訳をきってはいけない」という点です。

逆仕訳をきるとは、地代家賃のマイナス計上をする事を意味しており、具体的には以下の様な仕訳の事を指します。

を指します。

借方金額貸方金額
現預金40,000地代家賃40,000

「経費のマイナスにしても収益(益金)としても同じ結果なのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、これは課税売上割合に影響を与える事になるのです。

詳しくは以下で見てみましょう。

社宅家賃の自己負担部分の消費税課税区分

役員や従業員から社宅の自己負担部分を徴収した場合、徴収した金額については「非課税売上」となります。

これを「単純に払った家賃が返って来ただけだから」と地代家賃のマイナスにしてしまうと、課税売上割合に影響を与えるので注意が必要です。

消費税の計算をする際に重要となる課税売上割合は、以下の計算式で算出します。

課税売上割合の計算式

課税売上割合=(課税売上高+免税売上高)÷(課税売上高+免税売上高+非課税売上高)

計算式を見ると、分母に「非課税売上高」の項目が有りますよね。つまり、受取家賃として非課税売上高に含めるか、地代家賃のマイナスとして非課税売上高に含めないかによって課税売上割合が変わってしまうのです。

元々課税売上割合が100%近く有り、家賃の金額も全体の課税売上割合と比べて微々たるものであれば結果に影響はないかもしれません。

しかし、仕入税額控除として全額控除出来るかどうかの境目になる95%ギリギリの場合や、既に95%未満の場合には消費税の納税金額が変わって来ます(参照元:No.6401 仕入控除税額の計算方法|国税庁

従って、逆仕訳ではなく非課税売上として正しく処理する必要が有るのです。

補足:逆仕訳をきったとしても、消費税の区分を「非課税売上」にするのであれば特に問題有りません。

敷金・礼金関連の仕訳

マンションやアパートを借りる際、敷金(保証金)や礼金などが付き物です。敷金や礼金の処理は間違えやすいので、以下で1つずつ仕訳を見ていきましょう。

敷金を支払った際の仕訳

敷金は退去時に返金されるので、支払った金額が費用処理せずに敷金や差入保証金などとして資産計上(投資その他の資産)をします。

借方金額貸方金額
敷金150,000現預金150,000

なお、社宅契約が複数有る場合はそれぞれの敷金残高を簡単に把握出来る様に、補助科目を設定しておく事をオススメします。

敷金が戻って来た際の仕訳

一方で、退去時に敷金が戻って来た場合は、以下のような仕訳をきります。

借方金額貸方金額
現預金150,000敷金150,000

なお、原状回復費などとして敷金の一部を徴収される事が有ります。この場合は、敷金残高と返金された金額との差額を「修繕費」等として費用計上しましょう。

礼金・敷引の額が20万円未満の場合

上記の様に退去時に返金される敷金は、単にお金を預けているに過ぎないので、支払ったときは資産計上し戻って来た時に計上した資産を取り崩します。

しかし、礼金(or敷引)については返金されないので、費用処理が必要です。なお、法人税法上、礼金は「建物を賃借するために支出する権利金等(税務上の繰延資産)」に該当するので、決められた方法によって処理をする事になります。

まず、支出した額が20万円未満であれば、支出した事業年度に全額損金として処理する事が出来ます法人税法施行令第134条)

参考:不動産業者に支払う仲介手数料は、支払った時の損金(課税仕入)にする事が出来ます。

特に勘定科目が決まっている訳では無いので、支払手数料や雑費などの科目を使うと良いでしょう。

例えば、礼金として15万円を支払った場合は、以下のような仕訳をきります。

借方金額貸方金額
支払手数料150,000現預金150,000

参考:あくまでも、支払った事業年度の損金にする事が「出来る」に過ぎないので、原則通り繰延資産として償却しても構いません。

礼金・敷引の額が20万円以上の場合

一方で支出した額が20万円以上だった場合、繰延資産として以下の年数にわたって月割で償却をしていく事になります(参照元:国税庁「法人税法基本通達8-2-3」)

  • 契約年数が5年未満(※)・・・契約年数(1年未満の端数は切捨て)で償却
  • 契約年数が5年以上・・・5年(60ヶ月)で償却

※:契約の更新時に、権利金等を再度支払わないといけない事が明らかな場合。

例えば、礼金として40万円を支払ったときは、以下のような仕訳をきります。

借方金額貸方金額
長期前払費用400,000現預金400,000

そして、5年償却で当事業年度の償却月数が10ヶ月だったとすると、当事業年度の償却金額は100,000円(=600,000円÷60ヶ月×10ヶ月)で、以下の仕訳となります。

借方金額貸方金額
長期前払費用償却100,000長期前払費用100,000

なお、中には「2年以内に解約した場合は敷金全額返還し、2年経過以降は80%を返還する」といった条件の付いた契約も有ります。

この様なケースでは、2年を経過するまでは返還金額が分からないので、2年経過した時点で20%を償却する方法を採りましょう。

参考:礼金と敷引の両方が有る場合は、両方を合算した金額で20万円の判定をします。

敷金や礼金の消費税課税区分

敷金の支払はお金を一時的に預けているに過ぎず、資産の譲渡等の対価ではないので課税対象外(不課税)となります(参照元:No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など|国税庁

一方で、敷引が有る場合の敷引部分や礼金については「非課税仕入」として処理をします。

まとめ

社宅家賃関連の経理処理を色々見て来ましたが、事務所など事業用のテナントを借りる場合と大きく違うのは消費税の処理ですね。

事業用のテナントを借りる際の賃料等は課税仕入ですが、社宅関連経費については基本的に非課税です。これを間違えると消費税の納税額を間違える事になるので、十分に注意する様にしましょうね。

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