法人の株式数(発行可能株式総数・発行済株式総数)の決め方

株式会社を設立する際には社名や役員、本店所在地など様々な事項を決めなければなりません。そして、中でも重要な事項の1つに「資本金」が有ります。

大抵の人は「会社設立時の資本金は○万円にしよう!」と考えますよね。しかし、例えば資本金300万円の会社を設立した場合、その資本金は何株分なのか知っていますか?また、1株いくらなのか知っていますか?

資本金の金額ばかり気になって、株式数や1株当たりの金額や株式数をあまり気にしていない方もきっと多いでしょう。

そこで、ここでは株式数(発行可能株式総数・発行済株式総数)の決め方について見ていきます。資本金を決めるときのポイントは下記記事を参照して下さい。

参考にどうぞ
資本金とは?会社設立時に資本金を決める時のポイントも一気に解説! 株式会社を設立するときには、資本金の金額を決めなければならないですが、そもそも資本金って何なのでしょうか。また、資本金の大小は何に影響を与えるのでしょう。ここでは、資本金の意味や会社を設立する際の資本金の決め方などについて見ていきます。
目次

1株当たりの金額はいくらでもOKだが・・・

資本金の金額は「1株当たりの金額×株式数」です。

従って、本来は1株の金額と設立時の発行株式数を決める事で資本金の額が決まります。

しかし、会社を設立するにあたって重要なのは、1株当たりの金額や株式数を決める事ではなく「資本金を集める事」なので、1株いくらなのかについては後付けで構いません。

資本金が「1株当たりの金額×設立時に発行する株式数」が資本金の額になるように設定すればOKです。

例えば、資本金300万円の会社を設立しようと考えたとします。この場合、1株当たり300万円にして発行株数は1株(※)というのでも良いですし、1株当たり10万円にして発行株数を30株にしても構いません。

※:株主が二人以上いる場合は、1株しか発行しないというのは駄目です。

但し、1株当たりの金額を高くし過ぎると増資をする際に少額の出資を受けにくくなりますし、1株1円の様に安くし過ぎるとそれよりも安い金額での発行が出来なくなってしまうので、注意が必要ですね。

なお、日本では旧商法(※)の名残からか1株当たりの金額を5万円に設定する会社が多いです。司法書士等に会社の設立を依頼する時でも、「特に希望が無ければ1株5万円にしておきましょう。」と言われるはずです。

※:2001年10月1日の商法改正までは、額面株式という概念が有り、1株5万円以上と決まっていました。

従って、特段こだわりが無いので有れば、1株5万円にしておくと良いでしょう。

参考:例えば、資本金の額を999万円にして設立時点での発行株式数を70株にすると、1株当たりの金額に端数が出ますがこれ自体に問題は無いです。登記されるのは発行済株式総数ですし、1株当たりの金額は定款に記載しなくてもOKだからですね。

発行済株式数は1株当たりの金額と表裏一体!

発行済株式数(発行済株式総数とも言います)とは、読んで字の如く「既に発行した株式の数」という意味です。会社の設立時点では、設立当初に発行する株式数の事を指しています。

発行済株式数は、1株当たりの金額が決まれば自動的に決まります。なぜなら、資本金の金額は「1株当たりの金額×株式数」で計算されるからですね。

例えば、資本金の額を500万円にして1株当たりの金額を5万円にしたのであれば、発行済株式数は自動的に100株(500万円÷5万円)となります。

なお、発行済株式数は登記事項です。

発行可能株式総数の決め方!

発行可能株式総数とは、その会社が発行する事の出来る株式数の上限の事です

発行可能株式総数は定款や登記簿に記載され、会社は発行可能株式総数から発行済株式総数を引いた分までしか、株式を発行する事が出来ません。

参考:定款に発行可能株式総数が記載されるのは、会社の資金到達の機動性確保や取締役会の職権乱用を防ぐ為だと言われています。

発行可能株式総数は、株式の譲渡制限(※)が無く株主の数が多い会社の場合、経営権を第三者に奪われてしまう可能性が有るので、慎重に決めなければなりません。

※:株式の譲渡をするのに「会社の承認」が必要である旨、定款で定める事(会社法第136条)。株式の譲渡制限は登記事項。

例えば、発行可能株式総数300株の会社が設立時に50株を発行し、後の増資で250株を発行して別の人が取得してしまうと、経営権はその人に移ってしまいます。

参考:会社法第200条により、会社の定款に記載された発行可能株式総数の範囲内であれば、取締役会決議で新株を発行する事が可能です(これを「授権資本制度」といいます)。なお、会社設立時は、授権株式数の4分の1以上を発行する必要が有ります(会社法37条第3項)。

しかし、新規設立する会社の場合、社長が殆ど全ての株式を保有していますよね。また、株式に譲渡制限を設けている非公開会社が殆どなので、「気付いたら経営権を奪われていた」という事はまず有りません。

従って、中小企業の場合は発行可能株式数についてそれほど考える必要は有りません。特にこだわりがなければ、設立時に発行する株式数の10倍程度にしておけば良いでしょう。

なお、今後事業をどんどん拡大していき、株式もたくさん発行していこう!と考えている場合は、多めに設定しておいた方が良いでしょうね。

また、設立時の発行株式数を発行可能株式総数とイコールにするのでも構わないですよ。ただ、その場合、発行可能株式総数を変更して新株を発行する際に株主総会の特別決議や登記の変更手続が必要となり、手間やお金がかかってしまうので、その点だけ注意しておきましょう。

まとめ

株式会社を設立する際には、資本金の金額にばかり目がいってしまいがちですが、1株当たりの金額や発行可能株式総数なども考えておかないといけない事が分かりましたね。

とはいっても、オーナー企業の場合は問題になる事が少ないので、多くの会社がしている様に「1株当たりの金額=5万円、発行可能株式総数=設立時に発行する株式数の10倍」にしておくのも良いでしょうね。

なお、参考までに現在は株式に対して株券を発行しなくても構いません(株券不発行制度)。但し、敢えて定款で定めれば株券を発行する事も可能ですが(参考:会社法第214条)、会社をM&A等により売却する際など若干手間が増えてしまうので株券不発行会社にしておく方が無難です!

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